
2025年10月29日
「仮想通貨税制、2025年に本格改革へ JVCEAと金融庁の要望から見る3つのシナリオ」

「仮想通貨税制、2025年に本格改革へ JVCEAと金融庁の要望から見る3つのシナリオ」
近年、仮想通貨(暗号資産)市場では取引所規制やインフラ整備が進む一方、税制面では「雑所得(総合課税)」が維持され、高所得層ほど負担が重い構造が続いている 。
この現状を受け、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は2025年7月30日に税制改正要望書を提出。
続いて金融庁も8月29日に「税制見直しに関する基本方針」を公表し、業界の議論が新たな段階へ進んだ。
🔹 JVCEAと金融庁の立場の違い
JVCEAの要望:
利用者の利便性と課税の公平性を重視し、
申告分離課税の導入
損益通算・損失繰越の適用
交換時課税の繰延べ
など、納税者・事業者双方の負担軽減を強く訴えた。
金融庁の要望:
急激な制度変更による申告・報告への影響を懸念し、
段階的な改正
会計・報告制度の透明化
を優先。安定性と行政整合性を重視する姿勢を示した。
結果として、JVCEAは「利用者・実務優先」、金融庁は「制度安定・行政整合」を重視しており、スピード感に差があるのが現状だ。
🔸考えられる3つの改正シナリオ
🟠 シナリオ1:ETFなど市場インフラ整備が先行
ETF(上場投資信託)制度が先に整い、税制改正は段階的に進むケース。
ETF経由の取引については申告分離課税が選択可能となる一方、現物取引は引き続き総合課税のまま。
行政側の実務負担が少ないため実現可能性が高いシナリオだが、現物保有者にとっての改善効果は限定的となる。
🟡 シナリオ2:分離課税制度の段階的導入
株式などと同様の**分離課税(約20%前後)**を仮想通貨にも段階的に適用するケース。
初期段階では「国内登録事業者の現物取引」など範囲を限定し、海外取引・ステーキング報酬などは別管理とする可能性がある。
税負担が軽減され、計算も簡素化されるが、損益通算や交換時課税の扱いなどは制度設計次第で大きく変わる。
🟢 シナリオ3:株式等と同等の包括的改正
仮想通貨を株式など金融商品と同等に扱う包括的改正。
分離課税の恒久化
損益通算・損失繰越の拡大
法人取引・会計処理の明確化
金融商品取引法に準じた監視・開示制度
などがセットで導入される可能性がある。
ただし、法体系の大幅改編が必要となるため、議論と導入に時間がかかる長期シナリオだ。
🧩 もし要望がほぼ全て採用された場合
JVCEAと金融庁の要望が融合すれば、
「株式と同等の扱い+行政整合性の確保」という理想的な制度像に近づく。
分離課税の恒久化
損益通算・損失繰越の拡大
交換時課税・相続時評価の明確化
取引履歴の自動集計システム
透明な報告ルールの標準化
といった改革が進めば、納税者が事前に税額を把握しやすい環境が整う見込みだ。
ただし導入コストやシステム対応など、初期の混乱を避けるための支援体制が不可欠となる。
💡 今のうちに準備すべきこと
取引履歴の整理・保存(海外口座・ウォレット含む)
会計基準・記録形式の確認
税務相談窓口・専門家の確保
制度改正の動向把握
制度改正は段階的に進む可能性が高く、早期にデータ整理や報告体制を整えることで、将来の申告・税務対応がスムーズになるだろう。












